研修の一環で,市内+αの被災地を回ってきました。10年前は役所に勤務していて,所属している部署が,被災した学校の対応をすることになりました。あの頃のことを思い出してみると,けっこう仕事はきつかったですね。でも被災した学校の職員が,先の見えない中で頑張っている姿に,本当に教育の原点を教えられた思いでした。
昔,机を並べて働いていた同僚が,ここで校長をしておりました。あの日,校長は子どもたちや地域の住民を,迷わず校舎の上に避難させる決断をしました。それで多くの命が救われたのです。自分がここの校長をしていたら,迷わず同じことができただろうかと,ここに来るたびに教えられます。
震災の数年前,ここの学校が公開授業をしており,委員会として表敬訪問をしました。とても素敵な校舎で,学んでいる子どもたちも一生懸命でした。校長室に置いてあった大きな金庫が,見当たらなくなり,少し離れた田んぼの中で見つかりました。改めて津波の恐ろしさを身にしみて教えられました。あの素敵な校舎は取り壊され,この4月から公園として再利用されるようです。学校があった向かい側には,避難タワーがありました。ここの高さが10メートル。これくらいないと,住民の命を救えなかったのでしょうね。
閖上大橋を渡って,名取市に来ました。ここでは900名余りの人たちが犠牲になりました。びっしりとたくさんの家が並んでいたことを,今では想像すらできませんでした。今日一日,空はどこまでも青く,行く先々で蔵王の山並みが見えました。そして海はどこまでも静かで,10年前の災害が,きっと夢でも見ていたのかなと思うくらいでした。
やっと10年です。また次の10年が始まります。